P.A.Press
2019.3.29

『白ヤギからの手紙』[堀川]

 今回はちょっと硬い話から入りますが、以前地域の集会に出席したときのことです。新しく導入される行政指導に住民がもっと関心を持つように、もっと地域の広報誌の充実を図り活用すべきだという意見を聞いていました。そうだよねえ、会社のことに置き換えてみると、僕も社員にビジョンと戦略が浸透するように社内報を活用しようと考えたもんな。P.A.WORKSでその役割を担うブランディングデザインの担当者は片手間に出来るものではなく、時間も労力もセンスも求められている訳で。

 地域共同体存続の危機感と使命感で成り立っている小さな自治体では、住民が自身の仕事もしながら持ち回りで多くの管理役員を担っているわけで。広報活動にフルタイムに近い時間を割ける人材と予算があるのかしらん? リアル【サクラクエスト】だなあ。この会議に木春由乃が出席していたら何を提案するだろうかと腕組みして考えていたでござる。

 そんな流れから今回はP.A.WORKSが昨年秋に始めた社内報『白ヤギからの手紙yomazuni tabenaidene』について書こうと思います。内容はいたって真面目に取り組んでいます。何ゆえこんな緩い名前になってしまったのかには触れず、それはそれとして、創刊に期待を込めて第一号の冒頭に次の挨拶文を書きました。

社内報『白ヤギからの手紙』創刊にあたって

 今期から社内報『白ヤギからの手紙』を発行することにしました。これから四半期(1年間を4等分)毎に発行したいと思います。11月・2月・5月・8月の4回を考えています。社内の活動報告と、各セクションが提示した目標の成果とフィードバックが主な内容です。

 10月5日に本社、11日に東京P-10スタジオでP.A.WORKS経営方針説明会を開きました。そこで理念(P.A.WORKSは事業を通して何をしたいと考えているのか)と、3年間(2018年10月~2021年9月まで)のビジョン(経営目標)と戦略(ビジョンを達成する計画)の概要を話しました。朝から長い話を聞いても頭には入らないとか、経営にはそもそも興味が無いとか、それが自分の仕事とどう関係があるの?とか、まあ…今はそんなものだよね。でもですね、このビジョン達成が今後のP.A.WORKSにとって、延いては働く人にとってどんなに大切なものかは、是非知ってもらう必要があります。それと、頑張って目標に近づくにつれて自分たちの生活にどんな変化が起こったか―ほとんど良いことばかりのはず―を体感して欲しいと思います。

 そんな訳で、P.A.WORKSの理念とビジョンと戦略の社内浸透に、もっとじっくり時間をかけることにしました。こういった改善計画は「絶対にやるぞ!」と言い続けてから、社員の意識が変わり成果が体感できるまでに3年から4年かかるそうです。それまで粘り強く継続することが大切だって、改善に成功した人たちがアドバイスをくれました。

 実は過去にも改善プランは何度も何度も提案されました。でも、改善の意識が社内で共有されず長続きしませんでした。何が足りなかったんだろうと反省しました。

●社内スタッフがビジョン、戦略、アクションプランに触れる方法をつくること。

●各部署の目標設定を社内で共有できること。定期的にその成果を分析・評価してフィードバックすること。スタッフが共有できる小さな成功体験を作ること。

●その取組を継続することが楽しくなるような方法をつくること。表現や成果をビジュアル化して解り易くすること。

 これらの条件を満たすものとして、この『白ヤギからの手紙』を作りました。発行のための情報収集や編集は片手間にできるものではありません。これも継続するにはとても情熱や忍耐力が必要です。きっと発行スタッフの『スタッフに楽しんでもらいたい。役立つものにしたい』という気持ちが滲み出ているものになるでしょう。楽しみですね!

2号では「色づく世界の明日から」のキャラクターデザイン・総作画監督をつとめた
秋山有希さんのインタビューを掲載。

 P.A.WORKSは今回のビジョンと戦略策定に合わせてブランディングデザインを担当するセクションを新たに設けました。このセクションが担うのは、社内広報、P.A.養成所や人材育成のサポート等、中長期視点でP.A.WORKSの社内文化醸成と価値創造を担います。大きな成果を期待しているセクションです。社内報には社内と社外に対して次の役割を期待しています。

社内に対して

・会社の取り組みの本気度を浸透させる!

・ お互いの想いが空回りしがちな制作部とクリエイション部が共有する目標を明確にする!

・東京のスタジオと富山本社は距離も離れていて直接顔を合わせる機会が少ないので、在籍するスタッフにスポットを当てて紹介する機会にする!

・プロデューサーはスタッフに提示した目標に対して結果を示す。上手く活用すればスタッフの信頼を獲得できる。反対に、達成できずに制作現場が振り回されれば、おざなりのPだと信頼を失うことになる!

・これまで取り組みに対するフィードバックが全くできていなかったことを反省。成果を全社で共有できるものにしたい。各セクションの生産性向上の取り組み等、目標と評価指標に対して四半期毎に成果をフィードバックする! 重要な改善施策に対して継続的取り組みを根付かせ、PDCAのリズムを社内に作る。

・P.A.WORKSの七転八倒の取り組みを記録する!今は作品制作のことで頭がいっぱいで組織の運営にはそんなに興味が無い若手も、いずれは組織をけん引する役割を担うときが来るのです。試行錯誤を繰り返しながらビジョン実現に取り組んできた記録を残しておけば、次世代の役にたつこともあるんじゃないかと思います。

社外に対して

・本当はこの社内報をクライアントや関係会社にも配布したいけれど、未発表の作品情報が多く守秘義務があるので残念ながら配布することができません。多くのアニメーションの制作会社は現状の苦境を脱却するために改善策に取り組んでいます。P.A.WORKSもビジョン達成に向けて戦略を計画的に実行しています。僕らの制作現場は必ず強くなります。これからも良い関係を構築しましょう!と、社内報を活用してステークホルダーにもアピールしたかったんですけどね。

・その意味もあって、社外の関係者と交渉する機会の多いプロデューサーにとっては、社内報の掲載内容はとても重要なものになると考えています。プロデューサーはクライアントに何を語るのか。予算交渉も大切だけれども、「どんな作品をつくりたい」という情熱や、「それを可能にする制作現場だ」、「将来性のある現場だ」というポテンシャルが相手に伝わるようにしたい。多くのスタッフが頑張っている努力を背負っていることを自覚して欲しい。クライアントに説得力のある根拠を示してこそ、未来を見据えた前向きな交渉が出来るのです。それ故P.A.WORKSのプロデューサーは社内報に掲載されている内容を頭に叩き込んで、会社の未来とスタッフの期待を背負って営業に出て欲しいのです。

作品別プリプロダクションの目標値や達成度を共有
*この目標は2018年11月(第一号発行)時点のものです
○○○…まだ社外秘でござる。

 既に発行された社内報の第一号と第二号は読み易かった。ブランディングデザイン担当のスタッフがいろいろ工夫をしてくれたので、社内でも興味を持って読んでくれたようで評判は良さそうです。

 昨年ブランディングデザイン担当セクションができるまで、彼女は商品開発と物販の担当スタッフだったので、制作スタッフと直接やりとりすることがほとんどありませんでした。自分たちもスタッフの仕事に貢献したいと思っているんだけど、その機会がなかった。社内報の作成では社内でのデータ収集や対談、インタビューなど、スタッフとの直接のやりとりも増えました。読んでもらおうと頑張って作ったものがみんなに喜ばれる。それがP.A.WORKSのビジョンの浸透と達成に繋がるのです。これを続けることがどれだけ大きな成果に結びつくことになるのか、大変でもどんなにP.A.WORKSにとって価値のあることなのかを、たぶん本人もまだ実感できないんじゃないかなあ。でもいいんです。そんなに遠くない未来に、これを続けてきた効果が目に見える日がやってくると思います。

そんな訳で、次回はもう少し社内報に掲載された内容に触れようと思います。

堀川憲司

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