P.A.Press
2012.12.1

第5回 安田 猛 アニメーション制作会社の選択肢

アニメ業界のモデル変遷

堀川:話を戻しましょう。先ほどのお話をうかがっていて、作品が2クールから1クールの映像商品になって、映像自体のクオリティとバリエーションを売りにするという流れは、どこか旅館経営の変遷に似たところがあると思うんです。僕らが【花咲くいろは】を作った頃に旅館関係の本を色々読んだんですが、昔の温泉旅館の需要は長期滞在が基本だったそうです。湯治とか小説家の長逗留のような。それが旅行目的がどんどん変わって、現在のような一泊二泊の温泉旅行が主流になると、サービスのバリエーションで短期間に勝負しなければならなくなり、旅館経営の在り方も変わらざるをえなくなってしまいました。僕はアニメ業界以外のことを全く知らないんですが、他の業界で今後のアニメ業界の変遷の参考になるような、先行した業界モデルがもっと無いんだろうかと思っているんです。

安田:実は他の業種も変遷はみんな同じなんじゃないかと思います。本来大量生産・大量消費だったはずの商品やサービスが進歩の過程でバリエーションを増やしながら小規模型に切り替わっているんですよ。例えばアパレルや車などがそうだと思います。

菊池:旅館も昔は、社員旅行で100名、200名の宴会がドーンとあって、まさに大量生産・大量消費だったのが、今の旅館はどちらかといえば家族連れや個人を対象にした濃いサービスになっているんです。一方で例えば一人あたりの仲居さんが担当するお客さんが、以前は1人で50人受け持てたのが10人になった(人手がより必要になった)。プロ野球選手のような少数のスタープレイヤーであれば年俸何億になるんだけれど、仲居さんの収入としてはバランスが取れてない。アニメ制作でも安田さんがおっしゃっていたようにクオリティがあまり求められない時代は、少人数のアニメーターで生産できるので、一人頭の稼ぎは多かった。ところが今は小規模型、多品種小ロット型になって、かつ、より質を求められ、必要な人員は多くなったので、結果一人当たりの稼ぎは少なくなってしまった。私はこの辺のバランスが取れていない状態に見えるんですね。じゃあ稼げるようにするためにはどうすればいいかというと、客単価を上げるか、マーケットを広げるか、何かないと・・・というところでみんな足踏みをしている感じでしょうか。

安田:先ほどの話を踏まえると大事なことが何となく見えてきます。前提として自分たちが若い頃と現在とではアニメ業界のあり方がもう完全に別モノになってしまっている。その差異を先ず整理しないと過去に引きずられてしまいます。時代の変遷を一回ちゃんと総括した方がいいといったのはそういうことなんです。それに過去を知らないと新しいチャレンジもできません。

そのためにはアニメに近い業種の現状もある程度知っておいた方がいい。私は角川映画の責任者も兼任しているのでよくわかるんですが、例えば映画も相当厳しい状況にあります。興行の一発勝負で当てていかないと成り立たない分、実写映画の方がアニメより厳しいですね。だから「ビジネスとして成立させなきゃいけない」と必死に仕掛けてはいるんですが、やっぱり様々に攻め方を工夫していかないといけないと常に模索しています。

アニメ業界の過去から現在に至る変遷や、そうした今日の業界内外の状況も踏まえて今後の制作会社の理想のモデルとは何なのか、どういう風に追及していくかということですよね。

制作会社が若手アニメーターに示せる展望とは

堀川:先ほどと全然視点が違うんですが、4クールもの(マーチャンもの)と、1クールもの(アニメ自体の品質で売っていくもの)を同じ制作会社で両立しているのが一番いい、というお話がありましたが、それが出来ている会社が実はあまりない。先ほどもお話したように、30歳ぐらいまでの若くて収入が少ないアニメーターが、僕らの世代のように「好きなもの(仕事)だけをやって食ってきた」という事だけでは、実はその後の世代のアニメーターに対して未来を示せていない、ということが分かりました。40歳、50歳を超えたらどうやって仕事を続けていくのかが見えない。その年齢を超えてからも第一線で活躍しているアニメーターはグッと減ると思います。出来高の収入だけでは苦しいし、体力的、視力的な問題もあります。絵柄、技術が流行には乗れなくもなる。そうなってきた場合にアニメーション制作に携わる道は3つあると思うんですね。一つは作品において、制作現場において、企業において、自分の付加価値を上げることで出来高以上に必要とされる人間になること。もう一つは、アニメーション関連事業に関わりながら、アニメーターとは別の道を選択すること。もう一つは、流行や緻密なデザインではなく、「動かす」基礎があれば物量をこなせるキッズ向けのアニメーション作品に携わる。これらの方法が考えられるのですが、どれもアニメーターの個人的な努力だけでなんとかなるものではないんですね。企業が組織的に取り組まなければならないものだと思います。それに対して、アニメーターも制作現場や企業に対してどんな貢献ができるかを考えて、お互いに長期的で良好な依存関係、信頼関係が構築できるかだと思います。

さっきおっしゃったようなマーチャンもので、子供たち、これからの視聴者層を育てるアニメを、僕は作りたいなと思っているんです。今風の絵が描けなくなっても、「動かす」という事について、ちゃんと基礎体力があってきちんと仕事ができる人たちに対して、キッズ向けの長期作品が制作可能なラインを一本作ってあげないと、その人たちが使い捨てみたいになってしまう。今はうちの平均年齢もまだ20代ですが、この先はそれまで貢献してくれた40代を超える人たちのことも、企業として考えなければいけないんじゃないかと思っています。

もともと僕自身が【トムとジェリー】みたいな作品が好きだからアニメ制作の仕事を始めたんですが、今はそういうものを作るチャンスがなかなかありません。キッズ向けというとどうしても「低予算で動かない紙芝居でいいでしょ」というところがあるんですが、本来の子供向けのアニメは動きだけで喜ばせるような面白さを追求できると思っています。そうすると、それを1クールものに慣れているスタッフで作るのはすごく難しい。1クールって、最後はいつもスケジュールに追われて逃げ切りですから。4クールものを作ろうと思ったらもっと安定した戦力がいるので、今のうちではまだまだ作れないなあと思っていますが、そこは目指したいと思っています。若手はアニメーションファンに向けた1クールの作品を作って、ベテランはアニメーション本来の面白さを活かした、シンプルなキッズ向けの作品にシフトしていけたらいい。そういったラインが一本準備できると、これから入ってくる若手に「自分もいずれ今流行りの絵が描けなくなっても、長くアニメーターとして描いていけるんだ」というモデルを企業として見せてあげられるんじゃないかなと思うんです。

安田:問題はそういう作品のアニメ化権をどうやって手に入れるかですよね。

アニメにおけるCGの役割とは

安田:一方では今、キッズものはモーションキャプチャーやセルシェーディングなどの3DCGアニメもしくはフラッシュアニメ的な方向に行きつつあるじゃないですか。それだともう、アニメ制作会社というよりはCG会社ですよね。

堀川:アニメ業界で今後CGがどれくらい広がって行くかは、僕はちょっと読めないんです。テレビシリーズでCGを使っていくのは、予算的に今の状態ではすごく難しいんです。アニメーターって、良くも悪くもやりがいなどのバランスを見て、描くのがすごく大変なカットでもカット単価が平均化されているのですが、CGは「これをやるにはこの人が何日かかるから予算はいくら」とものすごくドライに出てくるんです。あるゲームのCGカットで、「水がだばーんと出てくるところを4カット頼みたい」という話をしたら「4カットで200万です」といわれたんですよ。それなら、劇場版の、それもトップクラスの予算でアニメーターに任せた方がいいやと思って。CGの予算のはじき出し方が、今のテレビシリーズにはまるで乗ってこないので、これが主流になっていくとは思えないんですよね。

安田:逆に手法によっては数万円で済んだりもするんですよね。フラッシュアニメに至っては5万円、10万円で一分間ぐらいの素材を作れてしまうけれど、そのクオリティ差は非常に露骨に出る。コーディネーターが間に入ると、見た目はとてもすごいんだけれどすごく高額とか作り方によって全然違いますよね。そこがCGのまだまだ知られてない事実なのかな。

堀川:先ほどキッズ向けアニメをうちも将来ロングスパンでやっていくには、という話をしていましたが、安田さんはむしろキッズ向けアニメが、CGとかフラッシュになっていく流れになると思われますか。

菊池:それに関しては私も安田さんと同じ意見かな。いわゆる商品としてのアニメを作るうえで発注するCGと、フラッシュ系で見せるCGという風に、いくつにも層が分かれている感じは確かにしますね。

安田:あとライブラリとか。すでにCGで作られている素材を流用していく。例えばヘリコプターとか潜水艦などは全部ライブラリで代用可能じゃないですか。素材が蓄積されていくとほとんどタダ同然っていう事になりますし。

菊池:パーツがある程度そろってくれば、あとは利用するだけですから。

堀川:ロングスパンになればなるほどね。キャラクターを統一する作画監督もいらない。

菊池:そうだね。

安田:キッズ向け(ロングスパンの作品向け)だということですよね。

菊池:例えば潜水艦自体にものすごく特徴がないといけない、というなら別でしょうが、それ以外の、人間でいうとモブみたいなものに関しては新たに作らなくてもいいという事も出てくるし、使用料さえ支払えば使えるパブリックなものだってこれからバンバン出てくるでしょうから。

安田:作画の部分をCGキャラにテクスチャで貼り付けて見栄えも一定のクオリティが保てればそういうやり方もテクニカル的な部分ではあるのかなと。

堀川:でも、すごく低コストでできるCGでは、ちゃんとしたモーションに関しては多分作れないと思います。

菊池:ただ、その動きの部分に関しても、どこまで表現するかにもよるけれど、例えばゲーム系などでよく使うモーションキャプチャーも、昔はスタジオ設備も含めて億単位かかっていたんでしょうが、今では機材もどんどん性能は上がって価格は下がっている。

堀川:じゃあもう手描きのアニメーターは生きていけないなあ。哀しいなあ。

菊池:社長がインタビューでへこんでどうするの(笑)

安田:いや、今回ロングインタビューにさせてもらいたいといったのは、実はそういう外側から話していった方が、ピーエーワークスという企業の将来的なところへの近道なのかなって思ったからなんです。

菊池:ありがとうございます。そもそもこの質問項目は、安田さんに聞くには、もうほんとにあれだよ。さっき初めて読んだけれどびっくり(笑)うちの社長はすごいことを質問するね。

堀川:だって、僕は以前【ニュータイプ】のインタビューでも答えたけれど、安田さんは経営的な視点とクリエーターの視点の両方を持って、僕らでは考えつかないような大胆な発想で新しい方法を切り拓いて下さっている。僕らはそのあとをついていっている訳で。だからそういう視点で見たいな、って。

安田:創作活動に対してポジティブで居続けるというのは大前提なんですが一方で客観性も持たないといけない。例えばコンピューターで動かしたキャラって僕らが見るとぬるぬる動いて気持ち悪いじゃないですか。でもあれを子供のころから見ていたら違和感なくなってしまうと思うんです。

菊池:そうなんですよ。どれを見て育つかは大きいですから。

安田:初期のハイビジョン映像は発色がすごくきれいだけどすごく違和感があったじゃないですか。遠景も近景も全てをクリアに映してしまったから距離感が掴めなかったんですよね。それが今は人間の目の構造に即して遠景はぼやけて近景は鮮明に映すカメラの技術革新が進んでいくわけです。それはアニメ業界でも併用していかないといけないと思います。その一方で今は2D技術でなおかつデジタル的な動画というものが構築されていく狭間の時期だと思うんです。だからもしかしたら個人アニメーターさんが一人でアニメを作れる時代が本当に来るのかもしれない。例えば原画と原画をつなげれば中割りは機械がある程度予想してやってくれるみたいな事があると動画作業の3~4割をコンピューターへ移行してチェックした時に違和感がなければ残りの6割だけ動画に出せば済む。時間短縮にもなるし経費削減にもなりますよね。もしかしたら今後はそうした技術をどこまで導入するかという比率の問題になってくるかもしれないですね。ですからいずれにしても世の中の変化と共に技術を上手く併用していかなきゃいけないのかなあと思います。

菊池:技術革新自身が、人間の作業をアシストするという事は今までだってあった訳ですから。だからアニメーターの手描きの感覚を、ここまではアシストをしてもいいけれど、これ以上はもう踏み込んじゃいけない領域だ、みたいにするというのは一つだと思う。

安田:ハリウッドでは俳優とCGキャラの線引きがあいまいになってしまって作品によってはほとんどCGなんじゃないかって(笑)。役者があんな動きできないんじゃないという話になってしまった。

菊池:あー、話題になってました。もう肖像権しか残りませんからね。「演じなくてもいいじゃん」という話になってしまうんですよね。

安田:ましてやアニメには肖像権もないので。人間じゃなくて紙だから。今は紙でもないのか。モニターだから。

菊池:「電子です」みたいな(笑)

アニメ制作会社を取り巻く現状

安田:そういう話を踏まえてアニメ業界を企業体の方から分析してみるとやっぱりそれぞれにクライアントがいるんですよね。多くの大手アニメ制作会社がここ数年で、遊戯メーカー、テレビ局、玩具メーカーといった大企業の傘下に入っています。

堀川:逆にいえば、会社の規模を大きくしすぎるとそうなってしまうということですか。

安田:僕の捉え方ではキッズ向け作品やビッグバジェット作品の減少につれて作品の細分化が起きたときに、大手の制作会社は従業員を食わせられなくなったんだと思うんです。

堀川:今は大きくない会社でも大きくなればいずれそうなってしまうというのと同じことですよね。

安田:規模が大きかったから吸収合併された訳ではないと思います。アニメ制作の構造自体が変わったことが原因で多くの従業員を支えられなくなってしまった。だから企業の方の問題というよりはアニメというジャンル自体の変遷から見た方が僕は正しいと思います。

堀川:僕は・・・アニメ制作会社を大きくする場合の適正規模というのが多分あって、その規模を超えても生産性は比例しては上がらない。むしろ無駄な管理費などがすごく大き膨らんで、それを支えられなくなる。なので、制作会社に適正な人数の上限を超えてはいけないような気がします。

安田:そういう会社もあるかもしれませんが、小さくてもすぐ潰れてしまった会社だってたくさんある訳ですから。

堀川:今は実行制作費を制作予算内に収めるのがとても難しくなっているので、制作予算のうち販管費に回せる予算というのはとても限られています。大抵の制作会社の売上のほとんどは制作費な訳で、販管費が膨らめばそれを補うために制作本数を増やすことになるけれど、制作本数を増やしても、それをしっかり作る制作体制が作れなければ、制作会社としては品質を落とすことになるし、ラインはガタガタになるしで、むしろ逆効果になる。今はクリエーターの安定確保が困難なので、量産体制をつくるのはとても難しい。とすると、販管費を極力抑えるような規模にするか、制作予算以外の収入で販管費を賄うような事業構造を模索することになる。

だからちょっとうかがいたいんです。安田さんは編集者として作家さんと長く付き合っておられて、なおかつアニメもずっと見ておられた方だからお分かりだと思うんですが、アニメ作品のクオリティは、作り手たちのモチベーションで大きく左右されるじゃないですか。工業製品とは少し違って、彼らが持っている「自分たちでこういうものを作りたいんだー」というポテンシャルみたいなものをクオリティに直結させられるのには、適正な規模があると思うんです。

安田:ええ、あると思いますよ。

堀川:会社の規模が大きくなればなるほど、それがどんどん薄れていってしまうんですよね。本来持っているべき『創作のポテンシャル』は比例して上がらない。作り手が創作に対して受け身になってしまうというか、それで、勢いを無くした大所帯になっていくんじゃないかと思います。

安田:4クールが2クールになって2クールが1クールになって大きな規模のラインが消えたのが要因ではあると思うんです。例えばかつて液晶薄型テレビが(国内市場で)飽和状態になって価格崩壊が起きたことがありました。それを主軸商品としていた家電メーカーは全盛期の雇用をなんとか削減しないと大赤字になってしまうということです。アニメ会社とは規模が違うのでイコールとは言えませんが。

菊池:薄型テレビの場合は、薄型テレビを作るのにも最初は熟練した技術者が必要だったのでしょうが、技術が人件費の安い海外に流れて国内の労働者が必要なくなる一方で、その商品自体が飽和してしまって誰も買わなくなる状態、その両方が起きている。

安田:そうですよね。

堀川:アニメのマーケットって飽和しているのかな。現場はこれだけ人が足りないのに。

菊池:DVD市場の映像商品としてのマーケットは、飽和というより縮小してきているよね。

堀川:そこに今ものすごく疑問を感じるんだけれど。

遊技機メーカーが制作会社をグループ化する背景

堀川:毎回「パッケージが売れない売れない」という割には制作される作品数は減りませんし、原画マンは全然足りません。

菊池:作品数が減らないのはビデオグラムマーケットが小さくなっていることと、あまり関係していないと感じます。スポンサー側にとっては、アニメーション自体に「商品」としての価値があるから、作ってもらっている。では「商品」としての価値が下がったら、作らないというのが普通の論理です。けれども、そのアニメーションが「商品」以外の価値も持っている、たとえば昔のようにコマーシャルとしての意味がある、と考えれば作り続ける理由になるのかなと・・・。

安田:じゃあまた視点を変えてアニメ業界に「クライアント」と呼ばれる企業はどのくらいありますか? 先ほど(第二章)、制作会社が次々と大企業にグループ化されていくという話がありましたよね。最近、制作会社が遊技機メーカーに多く買われているのはパチンコにアニメーション映像が使われるという状況が背景にあるからなんです。遊技機メーカーとしてはアニメーション制作会社とその映像制作技術を欲しています。更に言えばアニメーションパートを外部の制作会社に作らせるよりもグループ内で作らせた方が効率がいいし、利益を自分のところにホールドできます。その技術を使ってテレビシリーズを作っていく事ができればコストパフォーマンスがすごく良くなる。実は(事業の柱が)4クールや2クールのアニメーションからパチンコのアニメーションパートに切り替わった。だから遊技機メーカーがアニメ制作会社を子会社化しはじめた訳です。

菊池:そう考えると「アニメーション自体が商品である」というステージを過ぎて、逆に「アニメーションを使った商品」として新たにパチンコ台という方法が現れた、ということですよね。

安田:そうですね。そこにはプラスアルファの構造があるんです。というのも遊技機のアニメーションパートは例えば韓流映画や時代劇などをテーマにした台でも活用されているんです。実写の俳優が肖像権の問題で使えないパートが全部アニメーションやCGになっているんです。

菊池:そうですね。確かにうまく組み合わせてありますね。

安田:実写について回る肖像権の問題をそれで解消している。それを考えるとアニメーションは本来ある種の「媒体」としての存在でもあるということですよね。だから映像というカテゴリの中で初期は映画、次にテレビとつながって今度はコンピューターそしてパチンコとつながったのも自然の成り行きかなという気もします。そうするとクライアントも遊技機メーカーになったりするじゃないですか。

菊池:アニメの作り手側は、自分たちが作っているものは「作品」だと終始一貫して思っています。それに対してお金を出す側、あるいは利用する側は、「商品」だと思っている。その「作品」と「商品」がリンクしているモノ、それがビデオグラム(DVDやBlu-ray)のマーケットという考え方がありますよね。でも、その時期よりも前、あるいは現状はそうではなく、アニメーション自体がある商品に利用されるための「コンテンツ」であるということですよね。

安田:そうですね。だから我々アニメ業界の内側の人間も外側からアニメーションがどういう風に思われているか、視点を変えて見ないといけないと思います。実写映画でもそうなんですが内側の人間ってそれがわかっていなかったりするんです。そういうことも経営の立場であれば客観的に考えていかなければいけません。でなければ隣にいたアニメ制作会社の社長さんが気がつけばみんな実はオーナーではなくなっていた、なんてことも起こります。現に大手と言われるアニメ制作会社だと大企業のグループ入りしていないのはほんとにもう数社ほどしかありません。

菊池:そうですよね。

LOADING