吉原:机に向かっていれば学べることと、それ以外のところでしか学べないことがあるんだよ。この仕事は机に向かっちゃいがちなんだけど、机の上で学べることには限界がある。夜中によく徹夜になっちゃって無駄話が盛り上がっちゃったりする。その会話の中に実は何かが隠れていたりしてさ、意外にそう云うもんなんだよ。それもある種必要なんだ。
例えばね、自分はこう思っていたけど、コイツはそんな風に考えて仕事をしているのかってね。一番違うのは仕事に対するアプローチが違ってたりするんだよ。自分はいつもこう云うつもりで仕事をやっているのに、他の人達はこう云うつもりでやってたのかって云うのを知るチャンス。それは机に向かっていないときに盗みとるもんだ。そこを教えてくれなんて急に言っても出ないよ。日々の会話とか飲み会の会話の中にあるんだ。そう云うのって無駄なようで無駄じゃないんだ。何気ない話がとんでもないことになって返ってくることがあるわけじゃん? 私は血で描いています。『わーっ、かなわねー』みたいな。だけど、これは分かるんだよ。なるほど血で描いているやつがいるなら、そいつに勝つためにはどうすればいいのかってことは分かるんだよ。そう云うヤツがいることで、自分もそこまでやらなきゃなって云うことは分かるわけ。もしくは、それは違う、自分が正しいと云うことが確認できる。そう云うのって大事、自分のために。
『このカットってそんな意味があったのか』みたいなことも。そうすると自分の中に一個新しい引き出しができるんだよ。自分だけだとそのやり方しか思いつかなかったけど、人と話しているうちに、あの人はああ云う考えでアプローチしてたなっていう引き出しができる。1つのことに対して自分の中に選択肢が広がる。その選択肢が多ければ多いほど、問題に直面したときの対応力がつくよ。