ぼくはシャクレクマノミのレレ。
尺をくれ!って思う瞬間、誰もが一度は経験したことあるよね?
ぼくはいつも、この引っ込んだアゴにもっと尺をくれと切望しているよ。
そして、「自分にも登場の尺をくれ!」と言わんばかりに変なザリガニが川から飛び出してきたんだけど…。
この話、長尺になりそうな予感がするぞ…。
「オレっちはアメリカザリガニのザッキー。
田舎小川からはるばる流下してきた新米ボクサーだ!」
なんだなんだ?グローブなんか着けて。
最大の武器であるハサミを自ら封じたおまえなんか恐くないぞ。
「シルロブスター・スタローンみたいな強いザリガニになるためには
井の中のザリガニのままじゃあダメだと一念発起し、
世界一の大都海…太平洋を目指しているんだ」
やめときな、きみじゃムリだ。生物的に。
「おまえさんはシャクレクマノミのレレというんだな
…べつにシャクレてないじゃん(失笑)
だが、
多摩川には存在し得ないその奇抜なボディカラーとルックス…、
相当なオシャレさんとみた!
なあ、一緒に河口へ行くついでにファッションの極意を教えてくれよ!
都海者にバカにされたくないんだよぉ」
おっ、見る目があるねえ。
フッ…しょうがない。きみの熱意に負けた!
その無謀な夢に、喜んで付いて行ってやろうじゃん…?
こうして、2匹は都海へ出るためにひとまずは多摩川河口を目指し、
共に歩みを始めるのであった…。
長い旅路の中で2匹は語った。
お互いの出自や、ファッションについて、
そして、将来の夢のこと…。
ザッキーには“エビドリアン”というホの字の相手がいるらしい。
彼女を振り向かせるためにも都海へ出てビッグなザリガニにならなければと、
彼は瞳を輝かせていた。
レレはそれを話半分に聞きながら考えた。
都海へ出る目的。
“そういえば、ぼくは実家に帰って、それからどうしたいの?”
“出生の秘密を知って、どうしたいの?”
ノリと勢いでテキトーに日々を過ごしてきたレレに、まともな答えは何も思い浮かばなかった。
………
「そんなこんなで河口に到着したぞ~!
…って、もはや海だろコレ!」
たしかに見た感じはもう海っぽいけどね。
よし、説明してあげるよ。
河口では淡水と海水が混在しているんだ。
このように淡水と海水が混ざり合った液体は“汽水(きすい)”といって、汽水が占める区域である河口は“汽水域(きすいいき)”とも呼ばれるよ。
ちなみに汽水域を好んで生息する「ボラ」や「ハゼ」などのオサカナは“汽水魚(きすいぎょ)”というんだ。
でも河口で流れている水は、コーヒーと牛乳が混ざってコーヒー牛乳になるみたいに、完全に混ざり合うわけではないみたい。
ザックリいうと、河の上流から流れてくる淡水が上層にあって、その下には満潮によってさかのぼってきた海水があるという二層構造になっているんだ。
塩を含んでいる海水は淡水よりも重いから下の方へ行っちゃうんだってさ。
「じゃあ、どこからが海の始まりなんだ?」
その答えはこの“キロポスト”でしょ!
この表示が0km地点となる場所…、つまりそこが海の始まりじゃな~い?
あと今さらだけど、きみの作画、ぜんぜん安定しないね。
「じゃあ、あと1kmも歩けばいよいよ都海へ!?」
Yes…。
さあ、走り出そうぜ…! ぼくらの“夢の始まり”に向かって…!
嘘でしょ?
――― 何故 2匹は泳いで川を下らないのか?
そこには、生物として悲しいほど当然な理由があった…。
次回、とんぼ返り…
どうも、汽墜息(きついいき)こと園部です。
白い砂のアクアトープ』第20話はいかがだったでしょうか!?
生きもの成分補給中のくくるに群がっていたあのオサカナは「ササムロ」といいます。
ササムロは体に黄色い線が一本入っているのが特徴です。
あの線、なんとなく駅のホームの黄色い線を彷彿とさせませんか?
ササムロたちがくくるに群がっていた理由は、
「黄色い線の内側でお待ちください!」と、
オサカナワールドにトリップしかけていたくくるを現実に引き戻すためだった説を私は提唱いたします!
明日の11月25日からは第21話が放送です!ぜひご覧になってください!
つづく