P.A.Press
2020.11.10

設立から20年間を振り返って[堀川]

P.A.WORKSは今日まで20年間アニメーション作品を作り続けてきました。会社を設立した頃に描いた目標は、熱量のある制作現場で作品を作り続けたい。それだけでしたから、それが今も叶えられていることに心から感謝を申し上げます。

設立から4年くらい経つと、もっと理想の制作環境に近づけたいという思いから、これをやったら若手育成に効果があるんじゃないかとか、こうすれば制作現場は改善できるんじゃないかと、いろんな工夫を試みてきました。現実は目に見える成果が出ないことも多く、本当のことを言うと出ないことの方が多く、理想の制作会社との距離は逃げ水のように追いつくことができません。

これまでの何十という施策を将棋の感想戦のように振り返れば、もっと遠回りせずとも目標に近づく妙手があったのかもしれないと口惜しく思うこともあります。けれども、躓き転ぶことも多い山登りの只中では、何度でも志と希望を語る熱量と、危うい冒険を楽しむ図太さと、「そいつは面白そうだ!」と引き込まれていっしょに踊る仲間の存在が、目的地まで這い上がる命綱になります。

それに、結果の出ないことや、大きな困難にぶつかる度に頭を掻きむしった経験から学んだこともたくさんあります。会社全体で問題意識を共有するきっかけになったり、僕らがやるべきことに焦点を合わせて方向づけられました。そして今は、P.A.WORKSが目指す理想に対して以前よりもハッキリとしたビジョンを描いています。焦らず粛々と、深い泥沼に足をとられながら進むときにも、カット袋を大切に抱えて、「俺たちの戦いはこれからだ!」を合言葉にこれからも足掻き続けると思います。

 僕らが仕事で物語を創作するときは、脚本段階で主人公に次から次へと苦難や試練を用意します。それらをどうやって突破するかをスタッフがアイデアを出し合って、面白く力強い物語を生み出します。アイデアが生まれず悶々としたり、暗礁に乗り上げたりと難航することも茶飯事だけれど、三度の飯よりそれが楽しくてしかたがないから何十年も続けられています。もしも世界が滅びそうなときに、主人公は魔法や特殊能力を持たず、救世主たりうる美少女の友だちも持たず、かといってここで万策尽きるわけにもいかないとしたら、何を武器に闘って生き延びるのか。そんなアイデアばかりを寝ても覚めても、犬と散歩をしているときにも妄想しています。

同じようにノンフィクションの現実世界でも、先行き不透明なアニメーション業界で、小さな制作会社が大小様々な困難を克服する成長譚を書き続けるために、やっぱり寝ても覚めてももがいています。どんなピンチのときにも想像(妄想)を働かせて、心を躍らせていられるところが、僕らが生まれたときからネジが緩んでいるところであり、最大の武器なんだと思います。

そんな僕らが制作する作品を通して、変わろうとするアニメーション制作会社の挑戦を通して、地域社会へのコミットメントを通して、P.A.WORKSが理念に掲げる『未来を照らす灯りをつくる』を皆さまに感じてもらえるよう、これからも創作活動をつづけていきたいと思います。

写真は10周年のお祝いに頂いたパキラで、東京のP‐10スタジオのエントランスに置かれています。10年で上へ上へとスクスク育ちました。見てください、天井にはまだ届いていません。パキラの成長も頭打ちじゃないんです。まだまだ伸びしろがあるってことですね!

堀川

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